2009年7月中旬 晴
タカネヒカゲは高山蝶の中でも2500m前後の稜線に生息し、真の高山蝶とも言われています。姿を見るには3〜4時間の山道を登らなければならず本州の高山蝶の中で唯一未撮影となっていました。幼虫は2度越冬して成虫になるように、2度目の挑戦で撮影することができました。ハイマツの多い場所を飛び交うので、写真家の故・田淵行男氏は「ハイマツ仙人」と名付けました。天気の悪いときはハイマツの中などにもぐり込んでいるのではないかと思われますが、陽射しがあると多少の風はものともせず活発に飛び回り、止まるのは主に岩れき地の土や岩の上です。そうすると、姿は目立たなくなり、一度目を離すと見つけるのが難しいくらい周囲に溶け込んでしまいます。
タカネヒカゲ(静止)
ハイマツに止まる姿も撮りたいと探しましたが、あまりチャンスがありません。ようやく遠くから撮影しましたが、近づいて撮る前に飛び立ってしまいました。
タカネヒカゲ(静止)
緑の中では姿が目立つので避けているのかもしれませんが、何度かハイマツ以外の緑の葉に止まる姿は撮影できました。
タカネヒカゲ(静止)
産卵行動のような雌がいたので、遠くからシャッターを切りました。撮影中は見えていませんでしたが、拡大すると腹部を曲げて産卵しているようです。蝶の方を追いかけたので卵は確認できていません。
タカネヒカゲ(産卵)
別の個体ですが、近くで産卵を見る機会もありました。このときも蝶を追いかけてから卵を探したのですが、見付かりませんでした。
求愛は地面に近い高さで追飛を繰り返しています。速度が早いのでオートフォーカスで周囲の地面に合わせて撮影してみました。雄が前を飛ぶ形になっています。後ろは半分しか写っていませんが、雌雄は微妙です。雌雄の求愛、雄同士の争い、3匹以上の求愛の中の雄2匹が写った可能性もあります。
タカネヒカゲ(飛翔)
タカネヒカゲは翅裏で雌雄を判別するのは難しいようですが、雄は翅表に性標があります。ちなみにダイセツタカネヒカゲの雄には性標が見られません。
同様の撮影の中で3匹が写っているものがありました。止まった雌に2匹の雄が絡んでいますが、短時間で離れたので撮影できたのは偶然です。
タカネヒカゲ(求愛)
止まっている雌が産卵しないかと待っていたのですが、しばらく半開翅の状態でした。腹部が太いので雌だと思いましたが、ここまで開くと性標がないのも確認できます。
タカネヒカゲ(雌・静止)
これだけロケーションが良いのでパスト連写で飛翔を撮らないで引き返すことは出来ません。(笑)
槍ヶ岳を背景に入れたつもりだったのですが、少し移動してから飛び立ったので追い掛ける間にずれてしまいました。(泣)穂高の舞姫も写っていません。性標ははっきり確認できるので雄です。
タカネヒカゲ(雄・飛翔)
こちらは雌の飛翔です。性標は別のコマでないことを確認しています。槍ヶ岳から穂高までばっちり入りました。この少し前のコマまでの方がピントは合っていたのですが、高い位置を飛ぶ浮遊感が気に入ったのでレタッチして掲載します。
タカネヒカゲ(雌・飛翔)
この写真が撮れただけでもこのカメラを買った価値があったと思えます。
ちなみに穂高の舞姫は雪渓の間に残る黒い部分が女性が踊っているように見えることから呼ばれています。この写真だと左端から槍ヶ岳までの1/3程度の場所ですが、拡大しないと分りにくいですね。