2010年7月下旬
「Nature Diary」の虫林さんが中3日で上高地へ行くというので、案内していただきました。
早い時間に歩き始めますが、天気がすっきりしません。ポイントへ着いてしばらくすると雨も降ってきました。
ここでの狙いはヤリガタケシジミです。アサマシジミの高山種で、別の種類と分類されていた時期もありましたが、今はアサマシジミの亜種とされています。アサマシジミに比べて大きさが小さく、雄の翅表が明るい青なのが特徴です。
それまでも確認できていましたが、雨が止んで薄日も射してくると数は多くないものの、複数が確認できました。撮影したのは雌雄ともに同じ個体ばかりだと思います。雌の方は前翅の裏面の5つ目の斑紋が大きな楕円で1目でヤリガタケシジミと分かります。
ヤリガタケシジミ(雌・静止)
反対側の前翅が少し欠けていて、翅表によごれもあるので開翅は目立たないように撮影しました。
ヤリガタケシジミ(雌・静止)
雄の方は翅裏が少し微妙な斑紋ですが、周囲のヒメシジミとはかなり違います。
ヤリガタケシジミ(雄・静止)
翅表の鮮やかな青と、黒い線はヒメシジミとは全く違って見えるので間違いないでしょう。
ヤリガタケシジミ(雄・静止)
ヒメシジミも多いのですが、咲き始めのクサボタンで吸蜜するクロテン型の雄を掲載します。
ヒメシジミ(雄・吸蜜)
食草のタイツリオウギでも吸蜜は隙間からストローを入れているのでしょうか。好んで吸蜜するようですが、複雑な形状のために長めの時間になり、撮影には助かります。
ヤリガタケシジミ(雄・吸蜜)
花の少し小さいイワオウギでも吸蜜しました。こちらも食草だそうですが、ここでは数は少ないです。
ヤリガタケシジミ(雄・吸蜜)
求愛も何度か観察できました。お見合いです。
ヤリガタケシジミ(求愛)
ヒメシジミの雌にも絡むケースはありますが、すぐに離れます。長い求愛は同種の場合だけでした。
ヤリガタケシジミ(求愛)
残念ながら交尾は成立しませんでした。
ヤリガタケシジミ(求愛)
交尾が成立しないということは、交尾済の雌で産卵が期待できます。
観察を続けるとタイツリオウギの茎を下へ降りていきます。そういえば近似種のミヤマシジミでも根元付近での産卵を観察したことがあります。
ところが根元まで降りると上の方へ飛ぶという不思議な行動を繰り返します。
腹部を曲げたのは3度目でした。邪魔な葉などを片手で抑えての撮影です。
ヤリガタケシジミ(産卵)
根元の込み入った場所で、卵は確認できていません。少ない食草なので、引き抜いての確認はさすがにできません。
周辺ではコヒョウモンも何度か撮影しました。
コヒョウモン(吸蜜)
オオイチモンジの産卵も狙いの1つでしたが、天気がすっきりしないせいか姿が見えません。この天気のおかげでヤリガタケシジミが綺麗に撮影できたと思うので、贅沢は言えませんね。
他にはツマジロウラジャノメも撮影できました。
戻る途中ではコヒオドシの吸蜜を撮影しました。
コヒオドシ(吸蜜)
近くでコムラサキが集団で吸水していましたが、オオイチモンジは混じっていません。
吸水ポイントでは良い天気になっていましたが、オオイチモンジの雄の姿はありません。雄の吸水は短い期間のように思われます。
このポイントでは関西から撮影に来ていた方とも再会しました。話をしていると、オオイチモンジの雌が降りてきましたが、目の前を悠然と飛んで上に上がっていきました。撮影機会があれば良いのですが、こちらは先に帰りました。
オオイチモンジの雌は姿を見ただけですが、ヤリガタケシジミは各種の生態を含めて嬉しい撮影となりました。虫林さん、ありがとうございます。
また、同行を了解していただいたSさんにも感謝です。